土曜の夜遊び その2 2008.01.26
「大甚」を後にして、次に向かったのは、栄のプリンセス大通り。
時々昼間に、美味しいイタリアンレストランや北欧雑貨の店を訪ねたり、近くの矢場公園の鳩に豆をまいたり、古臭いアパートの中にあるギャラリーで時間を潰して遊んだことはあったけれど、夜にこの辺りを歩くのは初めてでした。
昼間はシャッターを閉じているテナントビルが、夜になると赤や紫のネオンで彩られていました。
お店の名前は「サンクス」。
スタンダードのジャズナンバーをBGMに、マスターの「エルビン関根」氏が
洒落た会話で私達を楽しくもてなしてくれました。
「ねえ、エルビン。あの歌、歌って!」
M氏夫人の熱いリクエストに応えて、歌うは「ROUTE66」。
それならばと、店に置かれたピアノを使ってM氏も弾き始めます。
弾むようなジャズピアノに合わせて、エルビンも軽快に歌います。
はじめの歌いだしを聴いた瞬間、体中に電流が走った様な驚きを感じました。
「わっ、わわわわわ!なに?なにこれ、マスター、滅茶苦茶上手い!上手すぎる!」
「でしょーー」
ROUTE66って言ったら、今まではナット・キング・コールしか知らなかったけれど、
ひょっとしたら、エルビンの方が良い声をしているかもしれない。
そう思わせるほど、エルビン関根氏は素晴らしい声の持ち主でした。
他にも幾つかのジャズナンバーを披露してくれました。

そしてこんな楽しい時間をもっと楽しく過ごそうと、
私達も一緒になって、エルビン氏と共にジャズを楽しみました。
M氏のピアノ、奥様のフルート、家人はパーカッション、そしてボーカルはエルビン。

少し時間が経つと、他のお客さんもどんどん入ってきて、いつのまにか大賑わいに。
私達の様にジャズ好きな方もよく来るようで、
突然「セッションしませんか」という展開になりました。
こんな機会は滅多にありません。相手の胸を借りる気持ちで、私も歌わせてもらいました。
歌を歌っている時、ふと頭の中に子供の頃の想い出がよぎります。
物心ついた頃、沖縄の嘉手納基地のフェンス越しから聴こえてくるジャズナンバーを、
繰り返し聴いては歌っていました。
年に一度、基地のお祭りがあって、そこでやっていたバンドコンテストに
飛び入りで参加させてもらいました。
景品の風船とガムが欲しかった。ただ、それだけの理由です。
一人、日本語の上手な黒人将校さんがいて、その人が優しい声で
「おじょうちゃんは、なにを歌いたいの?」と聞いてくれました。
でも曲の題名なんて知らなかったから、スキャットで歌いだしました。
するとすぐにバックバンドが曲を演奏してくれました。
拙いこどもの声を上手に拾ってくれた。
あの頃から、自分はジャズが好きになったのだと思います。
あの時の将校さん、もう向こうに帰っちゃったかな。確か、ペットを吹いてた。あんまり上手くはなかったけど……。
エルビンのマスターを見ていたら、沢山昔のことを思い出しました。
殆ど忘れていた事なのに、思い出すと何だか酸っぱい気持ちになります。
「おーい。それじゃ、最後に一曲やって帰るか」
「はーい!」
いつのまにか時間はかなり遅くなっていました。
最後にwater melon manという曲を演奏して、私達はサンクスを後にしました。
大甚で飲んで、サンクスで歌って。
こんな楽しい遊び方、大人にならないと味わえません。
本当に、楽しい、土曜の夜でした。
おいしい音楽 2008.01.05

昨日は知人宅の新年会に呼ばれてきました。
わたくし、家人も含めて総勢14人の盛大な宴でした。
下は1歳と少しの、ようやく自我が芽生えてきた赤ちゃんから
大東亜戦争を経験された80幾つの老紳士まで
老若男女が1つの場所に集まって、日永一日遊びました。
おいしいごはんに、おいしいお酒。
そしておいしい音楽。
皆が奏でる音楽を聴きながら頂くお酒の美味しい事!
とても贅沢な一日でした。

新年会の翌日。
飲みすぎて少し頭がぼーっとしている家人と共に、また知人宅へ。
昨日の今日で非常に申し訳ないと恐縮しつつも、
ベランダの方から七輪で何かを焼いている美味そうな匂いに、また心が躍り。
(七輪の上で焼いているのは、ほうばの葉の上にたっぷりのネギと味噌を乗せているんですよ!)
「味噌とおにぎりなんて、手軽で良いよね〜」と奥様は言われるのですが
私達には勿体無い程の御馳走でした。

そしてまた、ほろ酔い気分で演奏をはじめて。
明るい陽が、部屋の中にさんさんとふりそそいで、
真っ白な柱にきれいなプリズムが映りこんでいました。
明るくて軽快なピアノの音、低音が心地よいベースの音、
控えめに、かつ確かにリズムを刻むドラムの音。
聴いていて、本当に気持ちが良かったです。
ぼちぼち正月休みも終わりが近づいてきましたが、
今年も穏やかで楽しいお正月でした。
巣篭もり・ふゆ篭り 2007.01.09

遅ればせながらあけましておめでとう御座います。
昨年は皆さんと色々と親しく交流させてもらえたこと、とても感謝しております。
また今年も、どうぞよろしくお付き合い下さいませ。
さて今年のお正月。
私にとっては、とても充実したお正月を過ごしました。
年末までに大掃除や年賀状などの作業を早めに済ませた事もあって(今までに無いことだったので、家人はどうしたものかとびくびくしていたらしい)
年末からお正月の間は、とてもゆったりと家で過ごせました。

近所にある酒屋さんで美味い酒を一升瓶にしぼってもらい、
酒屋の親父さんが薦める美味しい肉味噌と塩漬の豚を買い、
正月にはうまい豆腐も添えて酒の肴にしました。
きゅっと冷えた辛口のお酒の、物凄く美味しかったこと!
何だか気持ちよくなっちゃって、そのままごろーんと眠ってみたり。

正月の食べ物と言えば、お雑煮も餅も食べました。どれもちょっとずつ。
あとは冷蔵庫の中にあるものを使ってちょこちょことおかずを作ったり、
いつも煮物用に使うほうろうの鍋でピラフを炊いてみたり(ガスで炊く御飯は美味い!きっと土鍋で炊くのも美味しいんだろうな)、
ことことと白菜と鶏肉を煮て美味しいスープを作ったり。
あとは箱根駅伝を見ながらミシンをダダダと動かして

早く温かい春がこないかなぁと思いながら、
タンポポ色のキルトを縫ったり

今までの鞄作りで余った布を縫い合わせて、大きなテーブルクロスを作ったりと

好きなことをいっぱいいっぱいやって楽しんでました。
外に出かけたのは、バンドの知人宅での新年会へお呼ばれしたこと。

我が家からは、子供用のドラムセットを持ち込み、その宅へ設置。
ウッドベースに、サックス、ピアノ、フルート、ギター、そしてボーカル用マイクも用意して宴の場は小さなライブ会場に。
美味しいお料理とお酒、そしてジャズ。
みんなで夜更けまで飲んで歌って騒ぎました。
今年もね、
たいして稼げなくてもいいからさ、
毎日の暮らしの中で1つでも楽しいこと、
心が豊かになることを見つけれたらいいなぁと。
あと、健康でいることが大切ね。心も、体もね。
そんなことをしみじみと思った冬休みでした。
今日から新学期がはじまり、また忙しさと戦っております。
でも何だか今年は、
忙しさの中に、ちょっとでも一呼吸できるような…そんな心の余裕を感じます。
そして、この「カフェ番長」も、見にきてくれた人がほっと寛げるような、その居心地の良いブログを目指してこの1年頑張って続けていこうと思います。
でも、あまり気負わない程度にね。
ことしもよろしくです。
お月さんこんばんわ 2006.10.09
10月に入って幾日か経ちました。
先日の中秋の名月、カオポンの所は時々雲に隠れながらも美しいお月さんを見ることができました。
十五夜のお月さんも好きですが、十六夜の月もなかなか風情があって良いです。
日曜の未明、ジャズバンドの練習で久しぶりに訪れた山小屋で、こんなお月さんを見ました。

満月なのかな。でも、すこーーしだけ欠けてるから、十六夜の月かな。
臼雲に覆われたお月さん、少しぼおっとしてる。
夜空は驚くほど蒼くて、空気はとても澄んでた。
山小屋の中で聞こえるギターの音色が、ちょっと哀愁を感じて、みんなで「秋だねぇ」と語ってた。
まだ10月だというのに、山小屋の夜はとても冷えていて、今にも霜が降りそう。
もうすぐストーブが必要かも。
懐メロで「月がとっても蒼いからー、遠回りしてかーえろー」という歌がありましたけど、
月がとてもきれいな夜は、本当にいつまでも眺めてみたいきもちになります。
これからは空気が澄んで、とても星や月がきれいに見えますもんね。
みなさんの所は、どんなお月さんが見れましたか?
先日の中秋の名月、カオポンの所は時々雲に隠れながらも美しいお月さんを見ることができました。
十五夜のお月さんも好きですが、十六夜の月もなかなか風情があって良いです。
日曜の未明、ジャズバンドの練習で久しぶりに訪れた山小屋で、こんなお月さんを見ました。

満月なのかな。でも、すこーーしだけ欠けてるから、十六夜の月かな。
臼雲に覆われたお月さん、少しぼおっとしてる。
夜空は驚くほど蒼くて、空気はとても澄んでた。
山小屋の中で聞こえるギターの音色が、ちょっと哀愁を感じて、みんなで「秋だねぇ」と語ってた。
まだ10月だというのに、山小屋の夜はとても冷えていて、今にも霜が降りそう。
もうすぐストーブが必要かも。
懐メロで「月がとっても蒼いからー、遠回りしてかーえろー」という歌がありましたけど、
月がとてもきれいな夜は、本当にいつまでも眺めてみたいきもちになります。
これからは空気が澄んで、とても星や月がきれいに見えますもんね。
みなさんの所は、どんなお月さんが見れましたか?
ジャズライブ その3 2006.08.29
何とか無事にライブも終わり、楽器をそこに置いたまま、一同車にのって花火会場へ移動。
今日は町主催の花火大会なのです。


山里の花火は、都会の花火と違って規模はうんと小さいですが、
うちあげる高さが低いので、物凄く大きく見えます。
それに花火があがる時、山で反響するので音が物凄く大きい。
あとは渋滞も無く、町より涼しいので、とっても良いのです。

花火大会が終わったら、またライブ会場へ。
今回ライブを企画、後援して下さった方々が打ち上げまで企画して下さいました。
「かんぱーーい!」
「おつかれー!!」

体育館の横でバーベキューを。
山里の皆さんと色々お話もできました。
小さなライブだったけど、心温まる一日になりました。
楽しかったなあ…。
今度は、もっともっと皆に楽しんでもらえるようなライブができると良いなあ。
(後書き)…7月の終わりにライブの企画を聴いてから、
私達のバンドは少し雰囲気が変わりました。
それまでは、殆ど自分達の演奏を聴く人がいなかった事もあり、
ただ楽しくやりましょうな気持ちだけでやっていた所があったのです。
でも、一人でも聴きにきてくれる人がいるのなら、
少しでも良い演奏をしたいと思うようになりました。
だから、今まではミスをしても「ドンマイ」で済んでいたのですが、「今のところ、もう少しこうしたら」と
意見が出るようになったのです。
今でも基本的に「楽しく、楽しく」の姿勢でいますが、
少し意識を変えると言うより、目標をもつ事でバンドの音が変わっていくのを感じました。
ジャズは一回一回演奏するごとに、演奏法が変わります。
だいたい、今日はどんな感じでやるのかなと、ある程度は予想がつくのですが、
それでも最後までやってみないとわからないところもあって、
それが面白いのです。
ちなみに、カオポンの担当はボーカルです。
歌詞の無い曲でもアドリブでスキャットをいれます。
ボーカルも楽器の1つ。
敬愛するエラ・フィッジ・ジェラルドやヘレンメリル、ビリーホリディのアルバムを何度も何度も聴いて、自分流に歌います。
歌っているときは、本当に楽しいです。
心が弾むんですな。
今日は町主催の花火大会なのです。


山里の花火は、都会の花火と違って規模はうんと小さいですが、
うちあげる高さが低いので、物凄く大きく見えます。
それに花火があがる時、山で反響するので音が物凄く大きい。
あとは渋滞も無く、町より涼しいので、とっても良いのです。

花火大会が終わったら、またライブ会場へ。
今回ライブを企画、後援して下さった方々が打ち上げまで企画して下さいました。
「かんぱーーい!」
「おつかれー!!」

体育館の横でバーベキューを。
山里の皆さんと色々お話もできました。
小さなライブだったけど、心温まる一日になりました。
楽しかったなあ…。
今度は、もっともっと皆に楽しんでもらえるようなライブができると良いなあ。
(後書き)…7月の終わりにライブの企画を聴いてから、
私達のバンドは少し雰囲気が変わりました。
それまでは、殆ど自分達の演奏を聴く人がいなかった事もあり、
ただ楽しくやりましょうな気持ちだけでやっていた所があったのです。
でも、一人でも聴きにきてくれる人がいるのなら、
少しでも良い演奏をしたいと思うようになりました。
だから、今まではミスをしても「ドンマイ」で済んでいたのですが、「今のところ、もう少しこうしたら」と
意見が出るようになったのです。
今でも基本的に「楽しく、楽しく」の姿勢でいますが、
少し意識を変えると言うより、目標をもつ事でバンドの音が変わっていくのを感じました。
ジャズは一回一回演奏するごとに、演奏法が変わります。
だいたい、今日はどんな感じでやるのかなと、ある程度は予想がつくのですが、
それでも最後までやってみないとわからないところもあって、
それが面白いのです。
ちなみに、カオポンの担当はボーカルです。
歌詞の無い曲でもアドリブでスキャットをいれます。
ボーカルも楽器の1つ。
敬愛するエラ・フィッジ・ジェラルドやヘレンメリル、ビリーホリディのアルバムを何度も何度も聴いて、自分流に歌います。
歌っているときは、本当に楽しいです。
心が弾むんですな。
ジャズライブ その2 2006.08.29

さあ、曲順をもう一度おさらい。
「今日は一応10曲演奏。
……じゃあはじめにね、スイカ売りの男(water melon man)。
カオポンはここで思いっきり歌って、
次は枯葉。
で、その次は虹の彼方に(somewhere over the rainbow )
これを3曲ぶっ続けね」
はい!了解です!
ちょっと緊張してきました!

はじまる30分前に、地元の人から見せてもらったチラシ。
地元の人みんなに配ったそうな。
「えーーーっ、こんなん出してたんだ!」
と、驚くメンバー達。
恥ずかしいやら、嬉しいやら。
そして、とうとうはじまりましたジャズライブ。

体育館は音が反響しやすいので、どうしても自分の音が聞こえにくいです。だから、いつも以上に注意してメンバーの音を聴きながら演奏します。
時々、自分も含めて皆の演奏がバラバラになってしまう事もあるけれど、とにかく笑顔で。
ジャズはクールでカッコ良く聴かなくちゃって思う人がいるかもしれないけれど、それは違う。
スイングにあわせて好きなように体を揺さぶって、好きなように聴いて欲しい。

バンドのメンバーの気持ちが伝わってきたのか、
一番初めに子供たちがのってきました。
カオポンのボーカルにあわせて、かわいいお尻をふりふり。
これは本当に嬉しかった!
子供たちが曲にあわせて嬉しそうに飛びはねたり、体をくるくるとまわしたり、そんな微笑ましい雰囲気に、周りの人達の顔もいつしか笑顔に。
ジャズって、そんなに難しい顔をして聴くものじゃないのです。

ライブ開始から30分後。
用意していた席はすべて埋まりました。
沢山の歓声と拍手を頂きました。
(後書き)…「こんな田舎だからさ、ジャズなんか聴きにくる人なんて、誰もいないよ」
そんな事を、実はライブをやるまで思ってたんですよ。地元の人にとってはなんとも失礼な話で。
でも、本当に誰も来るわけないと思ってたんです。
だけど、どんどん客席が埋まっていくのに、もう心底驚きましたね。
おじいちゃん、おばあちゃん、生まれたばかりの赤ちゃんと一緒の若い夫婦、若い兄ちゃん等など、みんな始めてお会いする人ばかり。
だけど、最後は皆でおもいっきり盛り上がりました。
ジャズライブ 2006.08.29

8月も、もう終わりの土曜日。
カオポンは名古屋から車で2時間ほど離れた山里にいました。

道端に咲くアカツメクサの花

昭和の終わりに廃校となった中学校の体育館

今日はここで、ジャズのライブが行われるのです。

夕方の6時過ぎに体育館につくと、中では既に観客用の椅子が並べられていました。
へえーー、こんな所でやるんだ!
(後書き)…カオポンが所属するジャズバンド、とうとう初ライブです。「学校の体育館で、ちょっと演奏する」ぐらいに思ってたんですが、学校へ続く坂道で手作りの看板を見つけた時に「おおーーーっ、何ですか!これは!!」と初めてライブをやるんだと実感。
さて、初ライブはどうなったかと言うと……。
4ビートの夜 2006.03.26

雪が解けて温かくなったので、そろそろ練習でも再開しようかと、
久しぶりにバンドのメンバーが全員集まりました。
集まった場所は、とある山奥にある喫茶店。
ジャズ好きなマスターとその奥さんが、御厚意で店をスタジオとして貸して下さっているのです。

奥さんが作ってくれたおでんを食べながら。おでんの具に「しいたけ」が入っていて驚いたのだけど、そのしいたけの美味しかったこと!
物凄く味がしみこんでぷりぷりの触感でした。あとゲソとごぼうの天ぷらもおいしかったし、大根もしみしみで!(食べてばっかり)


ああ、楽しかったなあ!
マイルス犬 2006.03.20
はじめて寄った喫茶店の扉をあけると 黒色の大きな犬が私の元へ寄ってきた。
黒と言えど、光の加減で毛が所々赤茶色に光って見える。
犬は暫く私の体を嗅ぐと、ビロードの様にしなやかな胴を私の体に摺り寄せてくる。
まるで「ここを掻いて下さいよ」と言わんばかりだ。
よしよし、席について何か注文するよりオマエの腹をかいてやるよ。下っ腹を撫で擦ると、犬はじいっと私の顔を見る。その思慮深い表情がとても人間くさい。
ふーん、そんなにじいっと私の顔見ちゃってさ。オマエは面白い犬だねえ。
そう、眼で犬に語りかけると、傍にいた「ママ」が話しかけてきた。
「お客さん、犬飼ってらっしゃるの」
ヤニでがらがらに掠れた声で、ママはそう言った。
「いえ、動物は飼ってなくて」
「へえー」
ママは心から驚いたような顔をした。
「うちの犬さ、あまり人に寄り付かないのよ。男の人にはすぐ吠えるし、女の人を見ても無視するし、全く愛想ないのよねえ」
そしておしぼりと水の入ったグラスを持つと、「トラ!」と犬の名を呼んだ。
「これっ、トラ!お客さんが通れないでしょ!」
けっこうドスの効いた声で叱るものの、「トラ」は全く飼い主の言う事を聞こうとしなかった。
それどころか、自分がさっきまで噛んでいた骨を咥えて、私の足元に転がしたのだ。
「うん?良い骨かじってんじゃん」
背をまげてトラの目線にあわせると、トラはまた、じいっと私の眼を見つめた。こんなに動物に自分の顔をまじまじと見られるのは初めてだ。けれど私は、トラが飽きるまで好きにさせた。
「お客さん、トラにすっかり気にいられたね」
淹れたての珈琲をテーブルに置くと、ママは私の顔を見て笑った。
「はあ、そう…ですか」
出された珈琲を飲みながらも、トラの視線はずっと感じていた。トラは骨を咥えたまま、じいっと私を見つめている。その眼差しがどこかで見たことがあると思いながら、私は珈琲を飲んだ。
珈琲を飲み終えて店を出るとき、私はママに「トラの写真を撮ってもいいか」と訊ねてみた。するとママはくすりと笑った。
「いいけど。でも、あんまりじっとしないと思うけど…」

そして撮った写真がこれ。
トラはとても良いモデルだった。
------いいかい?オマエさんを撮らせて欲しいんだけど。
眼を見て話しかけると、トラは自分でお座りの姿勢を取った。
あっけないほど簡単にシャッターが切れて、私は少しだけ嬉しくなった。
「えらいね、オマエ。どう撮れたか見てみる?」
デジカメで今しがた撮ったばかりの映像をトラに見せると、トラは可笑しな程真剣に見入っていた。
ママはくすくすと笑い、つられて私も笑った。
店を出ると、車の中で私は撮ったばかりのトラを見た。大きな眼でトラは何かを伝えたそうだった。
ほんとにオマエは面白い犬だねえ。
そう心の中で呟くと、頭の中にある人物の顔を思い出した。
漆黒の肌に大きな眼。枯れたペットの音が似合う人…。
瞬間、「SO WHAT」の最初の出だしのところが頭の中に聞こえて来る。
鳴り響くペットの音は「ぷぺー」と甲高く、空に向って突き抜けていく様だ。
-----ああ、こんな顔の人いたよ。いたいた。
そう独り言を呟きながら、ハンドルを横に切った。
黒と言えど、光の加減で毛が所々赤茶色に光って見える。
犬は暫く私の体を嗅ぐと、ビロードの様にしなやかな胴を私の体に摺り寄せてくる。
まるで「ここを掻いて下さいよ」と言わんばかりだ。
よしよし、席について何か注文するよりオマエの腹をかいてやるよ。下っ腹を撫で擦ると、犬はじいっと私の顔を見る。その思慮深い表情がとても人間くさい。
ふーん、そんなにじいっと私の顔見ちゃってさ。オマエは面白い犬だねえ。
そう、眼で犬に語りかけると、傍にいた「ママ」が話しかけてきた。
「お客さん、犬飼ってらっしゃるの」
ヤニでがらがらに掠れた声で、ママはそう言った。
「いえ、動物は飼ってなくて」
「へえー」
ママは心から驚いたような顔をした。
「うちの犬さ、あまり人に寄り付かないのよ。男の人にはすぐ吠えるし、女の人を見ても無視するし、全く愛想ないのよねえ」
そしておしぼりと水の入ったグラスを持つと、「トラ!」と犬の名を呼んだ。
「これっ、トラ!お客さんが通れないでしょ!」
けっこうドスの効いた声で叱るものの、「トラ」は全く飼い主の言う事を聞こうとしなかった。
それどころか、自分がさっきまで噛んでいた骨を咥えて、私の足元に転がしたのだ。
「うん?良い骨かじってんじゃん」
背をまげてトラの目線にあわせると、トラはまた、じいっと私の眼を見つめた。こんなに動物に自分の顔をまじまじと見られるのは初めてだ。けれど私は、トラが飽きるまで好きにさせた。
「お客さん、トラにすっかり気にいられたね」
淹れたての珈琲をテーブルに置くと、ママは私の顔を見て笑った。
「はあ、そう…ですか」
出された珈琲を飲みながらも、トラの視線はずっと感じていた。トラは骨を咥えたまま、じいっと私を見つめている。その眼差しがどこかで見たことがあると思いながら、私は珈琲を飲んだ。
珈琲を飲み終えて店を出るとき、私はママに「トラの写真を撮ってもいいか」と訊ねてみた。するとママはくすりと笑った。
「いいけど。でも、あんまりじっとしないと思うけど…」

そして撮った写真がこれ。
トラはとても良いモデルだった。
------いいかい?オマエさんを撮らせて欲しいんだけど。
眼を見て話しかけると、トラは自分でお座りの姿勢を取った。
あっけないほど簡単にシャッターが切れて、私は少しだけ嬉しくなった。
「えらいね、オマエ。どう撮れたか見てみる?」
デジカメで今しがた撮ったばかりの映像をトラに見せると、トラは可笑しな程真剣に見入っていた。
ママはくすくすと笑い、つられて私も笑った。
店を出ると、車の中で私は撮ったばかりのトラを見た。大きな眼でトラは何かを伝えたそうだった。
ほんとにオマエは面白い犬だねえ。
そう心の中で呟くと、頭の中にある人物の顔を思い出した。
漆黒の肌に大きな眼。枯れたペットの音が似合う人…。
瞬間、「SO WHAT」の最初の出だしのところが頭の中に聞こえて来る。
鳴り響くペットの音は「ぷぺー」と甲高く、空に向って突き抜けていく様だ。
-----ああ、こんな顔の人いたよ。いたいた。
そう独り言を呟きながら、ハンドルを横に切った。
土曜の昼はボッサを 2006.03.11
久しぶりにジャズしてきました。
この時期忙しい人や、雪山から街へ降りて来れなかったり、家の都合でこれなかったりと、
メンバーが全員揃う事は出来ませんでしたが、久しぶりに生の楽器の音を聴きました。
たぶん、自分と家人が今まで一番顔を出せなかったと思います。
その理由の大半は自分にあるのですが。(あまりにも忙し過ぎるのです)
今日はただ顔を出すぐらいの気持ちで、楽器も何も持たずに行きました。
でも、皆の顔を見たら、やっぱり歌いたくなっていつの間にか「Corcovado」を口ずさんでいました。

Corcovadoは、アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲したボッサの名曲。
去年の暮れに、そのナンバーをアストラッド・ジルベルドが歌ったアルバムを手に入れて、
殆ど毎日この曲を聴いていました。
ジョビンの曲を初めて聴いたのは15年ぐらい前。15年かけて、やっと歌えるようになってきたかな。
今日はフルートとピアノ、ウッドベース、そして家人のパーカッション。
パーカッションと言っても大した楽器は用意していないので、
どこかリズムを作り出せるような「面」を見つけると、そこでドラムスティックを叩くという感じで。
久しぶりに音を合わせてみたけれど、皆とても良い音を出してました。
あっ、久しぶりだったから新鮮な気持ちだったからかな。
時々エヴァンスをやったり、木の芽時だと言うのに「枯葉」を演奏したり…あっ、「四月の想い出」もやったっけ。
引き立ての珈琲と一緒にベースの人が手土産にもってきれくれたケーキをつまんだり、
「今度この曲やってみない?」とレコードを出して聴いてみたり。

二時間しか遊べなかったけれど、とっても楽しかったです。
自分の仕事が一段落着いたら、今度は夜中まで楽しみたいな。

この時期忙しい人や、雪山から街へ降りて来れなかったり、家の都合でこれなかったりと、
メンバーが全員揃う事は出来ませんでしたが、久しぶりに生の楽器の音を聴きました。
たぶん、自分と家人が今まで一番顔を出せなかったと思います。
その理由の大半は自分にあるのですが。(あまりにも忙し過ぎるのです)
今日はただ顔を出すぐらいの気持ちで、楽器も何も持たずに行きました。
でも、皆の顔を見たら、やっぱり歌いたくなっていつの間にか「Corcovado」を口ずさんでいました。

Corcovadoは、アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲したボッサの名曲。
去年の暮れに、そのナンバーをアストラッド・ジルベルドが歌ったアルバムを手に入れて、
殆ど毎日この曲を聴いていました。
ジョビンの曲を初めて聴いたのは15年ぐらい前。15年かけて、やっと歌えるようになってきたかな。
今日はフルートとピアノ、ウッドベース、そして家人のパーカッション。
パーカッションと言っても大した楽器は用意していないので、
どこかリズムを作り出せるような「面」を見つけると、そこでドラムスティックを叩くという感じで。
久しぶりに音を合わせてみたけれど、皆とても良い音を出してました。
あっ、久しぶりだったから新鮮な気持ちだったからかな。
時々エヴァンスをやったり、木の芽時だと言うのに「枯葉」を演奏したり…あっ、「四月の想い出」もやったっけ。
引き立ての珈琲と一緒にベースの人が手土産にもってきれくれたケーキをつまんだり、
「今度この曲やってみない?」とレコードを出して聴いてみたり。

二時間しか遊べなかったけれど、とっても楽しかったです。
自分の仕事が一段落着いたら、今度は夜中まで楽しみたいな。




