カフェ番長

カフェ番長「カオポン」の、珈琲と喫茶店日記。 時には鞄を作ったり、ジャズを歌ったり。 手作りの暮らしを楽しんでます。

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想い出

金曜日の夜、母さんから電話がかかってきた。「今日はどうだった?あ、そうなん、それで?ふんふん、そうなの。ふーん」と他愛も話をしたあと、暫く母さんは沈黙した。

「母さん?」

私は訊ねた。ひょっとして、何か思いつめてることでもある?
母さんが黙る時は、だいたい何か悩んでいる時だ。案の定、「あのねぇ」と母さんは話をはじめた。

「捨てられないの」
母さんの声は今にも泣き出しそうだった。
「どうして?何を捨てられない…て?」
「うん」
やや沈黙して、母さんは言った。
お父さんの遺品の整理ができないと。

「捨てんでも、いいがね」
無理して整理しようとしたら、辛いだけだよ。そんなに辛いなら、明日どんなものを整理したらいいか、あたしが一緒に見てあげるわ。そういって電話を切ると、私は机の上にミシンを出した。そして黙って鞄を縫い始めた。

翌日、早めに家を出ると私はお父さんのお墓へ行った。
お線香つけて、ろうそく灯して、花を添えて手を合わせる。
なむなむと唱えながら、空を見上げる。空はとてもきれいに晴れていた。
その後実家へ。母さんは私の姿を見るなり、押入れからクリアケースを2箱出してきた。箱の中は父さんの服がいっぱい詰まってた。
「こういうの、いつまでも持ってたらいかん」
母さんの目は少し赤かかった。

「そうかな」
何枚か見覚えのあるシャツを広げると、私はシャツの皺を伸ばした。
「まだ二年にもなってないよ。何年経っても、心の整理は全部はできないものだって。想い出のものを捨てるより、何かに生かしてみたらどうなん?」
赤のネル地のシャツを母さんの膝に置くと、母さんは黙ってそのシャツを撫でた。

ねえ、こんなんどうかなぁ。
ほら、このシャツなんか、結構良い生地だから、この生地を使って小物を作るなんて?
旅行行く時のポーチとか巾着袋とか、あっルームシューズでも良いよ。それでさ、この生地の服着てお父さんと旅行したなぁとか思い出せると良いんじゃない?

ねっ、そんなに思いつめなくても良いよ、母さん。
いまはまだ何の慰みにもならないけど、そのうち父さんの着てた服を使って、お母さんを喜ばせてあげる。
その後、母さんは何も言わずにクリアケースを押入れにしまった。シャツは何枚か、私が引き取ることにした。


帰りの車の中で、私は父さんの服で、どんなものができるのかあれこれと考えた。
お父さんが生前着ていたシャツは、お世辞にもあまり良い趣味とは言えない。
何とか生地を生かせると良いんだけどなぁ…。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

日記の後書き

ちと、暗い話でスミマセン。
最近凄く母さんが穏やかそうに見えただけに、
ちょっと可哀相だなぁって思っちゃったんだ。
何とか良いものを作れると良いなぁ。




bag011.jpg


鞄は金曜日の夜に作ったもの
秋冬用の鞄、これで3作目。余り布でティッシュをつくったぞよ



bag012.jpg

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| 手作り・工作いろいろ | 01:08 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

カオポンさん、おはよ

カオポンさんのおかばんを見てるとなんだか物凄くホッとするな

いっぱいおかばん置いてあってその中から
『私が作ったのはどぉ~れだっ?』
そう聞かれても多分すぐ判る・・と思う

だってうんとあったかくってカオポンworldしてるんだもん♪

そうだよね・・何年経ったって心の整理はできないよね(しみじみ)
ママさん、カオポンさんみたいな優しい娘さんが居て良かった(^。^)

| うづまきなると | 2006/10/15 06:54 | URL | ≫ EDIT

なかなか整理がつくもんじゃないですよね。
無理して整理しなくてもいいと思いますよ。カオポンさんがお父様の衣類で何か作ったらそこからまた新しい思い出ができると思うの。それって素敵なことだなぁって…
カオポンさんの優しい気持ちに(゚ーÅ) ホロリ
手作りの鞄からもあたたかさが伝わってくるよ~(^-^)v

| アマランサス | 2006/10/16 08:11 | URL |

私の母なんかも捨てられない人です。
今の住処を改装するときも、捨てる捨てないで母とかなり言い争いをしました。
私にはどんなに思い出があるものでも、使わないものはゴミなのですが・・・
レコードなんかも聴かないものはどんどん売ってしまいます。おそらく家にあるものの5倍くらいは売ったと思います。
友人は「思い出を売るみたいでいやだ。」といいますが、私は必要ないものを収納するためのスペースが嫌なのです。
カオポンさんみたいにリフォームしてこそ、ものは生きてくるように思います。

| 和三郎 | 2006/10/16 09:39 | URL | ≫ EDIT

うづさんへ


どもどもこんにちはです~。
カオポンの鞄、カオポンworldしてるっておっしゃって下さってとっても嬉しいです。

手に取った人、眼に留まった人の気持ちが温かくなるような、そんな物づくりを目指しているので、うづさんの言葉がとてもとても嬉しいです。

母さんはあの後から、随分気が楽になったようでした。最近は天気が良い日が続くからと、父さんの服を洗濯して、天日に干しております。いつ、カオポンがこの服で何かを縫い始めても良いようにと。

うづさん、どうもありがとう~!

| カオポン | 2006/10/17 23:01 | URL |

アマランサスさんへ

こんにちは~、アマランサスさん。
アマランサスさんの優しい言葉、心に染み入ります。周りの人が会うたびに「もう大丈夫だね~」とか「寂しくないでしょ~」と声をかけてくれるようで、母さんはその度に「うん、もうへっちゃら」と返事していたようです。そんな無理することなんか無いのになぁと思っていたんですが、娘の前で想い出を捨てられないと哀しんでくれて、自分は内心ホッとしました。

娘が父を偲ぶ気持ちと、妻は夫を偲ぶ想いは違うんだなぁと思いましたね。
父さんの思い出のもの、これから少しずつリフォームしてみようと思います。

アマランサスさん、どうもありがとう!

| カオポン | 2006/10/17 23:17 | URL |

和三郎さんへ

>使わないものはゴミ

おおーー、私も基本的に同じ考えですね。
本や趣味の物はわりと沢山あるんですけど、生活道具や衣服はあまりもたないようにしてるんです。「使わない食器は持たない」とか、特売にあまり踊らされないとか…随分生活臭い話ですけどね。(笑)
でもなぁ、レコードは捨てられないですねぇ。
CDはどんどん売りに出すんですけど、レコードは…。
そう思うと、和三郎さんは凄いなぁ。潔さと言うんですかねぇ。うーん、凄い。
和三郎さんのコメントに刺激を受けて、今日は仕事から帰ってきてから、ごそごそと写真の整理をしています。これもけっこうたまってしまうのです。まずは似たり寄ったりな写真をゴミ箱へ。これもけっこう時間がかかっております……。




| カオポン | 2006/10/17 23:39 | URL |

カオポンさん、こんにちはv

カオポンさんってなんて、いい娘なんでしょう!お母様と凄く仲が良くてらしてしっかりお母様をささえてらっしゃる。
また、すぐに思い立ったら実家に変帰れる距離も羨ましいです。
私とは母大阪と香川で離れていてなかなか思うようには会えないのが難点。実家から離れてしまった事を一生悔やむんだろうと思っています。

カオポンさんの作品は独特の個性がありますよねvとてもあたたかい物を感じます。
きっとバザーなどで出品したら飛ぶように売れる事間違いないですよ!私も欲しいです。v
袋物作家なんていかがでしょう?うん、絶対イケます♪

| さつき | 2006/10/19 06:00 | URL |

こんにちは~さつきさん!
わあ、どうもコメントありがとうございます。
自分は全然良い娘してないですよ(笑)かといって特別に親不孝な事はしてないとは思いますが、結婚するまえは結構シビアな関係でした。
大人になってからですね、母の事を少しでも大切にしたいと思えるようになったのは。

さつきさんは、お母さまとは離れて暮らしてらっしゃるんですね。
なかなか遭えないのは、仕方ないですよw
さつきさんには、さつきさんの御事情がありますもの。でも、さつきさんがそうやってお母様の事を想う気持ち…きっと伝わってると思いますよ。

そして、鞄。どうも温かい感想を有難う御座います。
また時間ができたら(できなくても、つい作りたくなっちゃうのですが)、色々作ろうかと思います。
作っていく中で「これは!」と思う物が出来たら、よかったらさつきさんに進呈しますよ。

ではでは~

| カオポン | 2006/10/21 01:05 | URL |















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