カフェ番長

カフェ番長「カオポン」の、珈琲と喫茶店日記。 時には鞄を作ったり、ジャズを歌ったり。 手作りの暮らしを楽しんでます。

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掌編小噺 「工場と異人の夏」 その1

朝日が登ってまだあまり空気があったまっていない頃、
俺はいつもベットの上でサッカーボールを触っている。
はじめは、五角形と六角形の形の皮が継ぎ接ぎされた糸目を指でなぞるって、
次は拳で何度か表面を叩いて空気が充分に入っているのを確かめる。
その後すぐに「そいつ」を鞄に詰め込んで、ついでに履き慣れた靴もぶち込んで家を出る。

出かける所はいつも同じ所。
自転車で海岸沿いの道を、朝日が昇るのとは反対の方角へ、
ただひたすら漕いでいく。
頬を撫でる強い海風は身を切るような冷たさで、どれだけ漕いでも体は温まらない。
そのうち耳たぶが寒さで傷みを感じ始めた頃にやっと海風は静まり、背に受けた朝日に温もりを感じ始める。
海から少し離れ、山に向かう細い道を進む。
霜柱で少しだけ持ち上げられた地面をギュッと轍をつける様に踏みしめていく。
そして、一日中煙突から煙が消える事の無い工場の前に広がる空き地の前で、俺は自転車を止める。



工場の中から時々、業務連絡の様な放送が聞こえる。
何を作っているのか分からないけど、一日中、機械が動く重い音が聞こえる。
工場の周りは俺の背の高さ位のコンクリートの外壁で囲まれ、更にその上を有刺鉄線が張り巡らされていた。
俺の高校の体育館ぐらいの広さの工場が二棟あって、その奥には赤い煉瓦の壁で作られた建物が見える。
子供の時からこの空き地で遊んでいたけど、有刺鉄線に囲まれた古い工場を見るたびに、どこか薄気味悪さを感じがした。

工場の周辺には家も建物もなく、濃い緑色の雑木林が山に向かって続いている。
俺が生まれる前からこの工場はあって、工場の前の空き地も昔からあったらしい。10年以上も建物も立たず放ったらかしの状態だったから、ものすごく地面は荒れている。
子供の時に友達と掘った落とし穴は、長い時間を経て雨が降るたびに穴が深くなっていて、ある時ふと覗いてみたら、使えなくなったテレビとくたびれたソファーが穴の中に捨てられていた。
キックベースや缶けりをやった跡は、いつの間にか消えて、そこには雑草が生い茂り、秋には群生したセイタカアワダチソウがまっ黄色の花を咲かせて、風に揺れていた。
きれいに整地したら、サッカーコートが2面ぐらいとれそうな荒れ放題の空き地だ。
俺はその空き地で、いつも一人でボールを触っている……。







サッカー用のトレーニングシューズに履き替えると、軽く体を準備運動をする。
膝の靭帯をゆっくりと息を吐きながら伸ばしていく。
吐く息が真っ白になる冬の朝、かじかんだ体を時間をかけて暖めると俺はボールを出す。
始めにボールを腰の高さまで持ち上げると、俺はそこから手を離す。
重力の方向に向かってボールが地面に落ちる寸前に、俺の足先の甲で受け止める。
やわらかく、やわらかく。
一瞬、吸盤の様にボールは吸い付いたかと思うと、俺の甲をジャンプ台にしてふんわりと浮かび上がる。
膝の高さまで浮かぶと、またボールは俺の甲に落ちてくる。
地面には落ちない!
俺の甲、膝、腿、肩、背中、頭…太陽の周りを周る地球みたいに、ボールは俺の体を跳ねながら周るんだ。
ボールリフティング。
サッカーの中で俺が一番楽しいと思える遊び。
ついた数をカウントしながら時々眼を瞑る。
荒れ果てた空き地が一瞬、南米の子供達がはだしでボールを追い求めて乾いた大地の中で走り回っている様な幻想に囚われる。
小さな子供が人形を使って自分の世界に入る様に、俺はボールを使って自分の世界に入り込んでしまうのかもしれない。

ボールをついた数が1000を超えると、体中が熱くなってくる。
少し膝が疲れてくるから、一旦ボールを高く上げて俺は額に乗せる。
体の全てのバランスを保ちながら、時々首を横にずらしながら落ちてこないように額の上でキープする。
はたから見たら、何処かの修行僧の荒行に見えるかもしれないけど、たいした事ではないんだ。
ボールの皮を肌で感じながら、その向こうの突き抜けた青空を覗いてみる。そこから見える景色は結構面白い。
曲芸の様な遊びに興じている間、太陽はゆっくりと高く上がる。
やがて有刺鉄線の向こうから、7時の時報と共にサイレンが鳴る。

「夜勤の皆さん、今日の労働は終了しました。皆さんお疲れ様でした。
各自持ち場の片づけ、点検が終了次第退社の準備を行って下さい。
なお、帰りのマイクロバスは7時10分に発車します。業務連絡…」


決まって7時には、社内放送が辺りを響かせる。
そして、少したつと夜勤明けでぐったりと疲れた従業員を乗せた古いマイクロバスがゆらゆらと揺れながら、舗装されていない道を街に向かってのろのろと走り出す。俺はバスが空き地の横を通る時だけ、額に乗せたボールを一度だけ地面に落とす。そして、また膝より下の高さでリフティングをしながら、バスが通り過ぎるのをじっと見つめている。

いた…!

今日も「アイツ」が俺を見ている。
すし詰めになった車内の中、曇ったガラス窓から俺より少し背の低い、少年の瞳が俺を見つめている。
水蒸気で曇った窓を少し浅黒い肌のこぶしで拭きながら、大きな瞳で何か訴えるかの様な表情で俺を見ている。

「なんなんだよ、アイツ」

俺はボソリと呟きながら、ボールをついた。
マイクロバスが俺の前を過ぎ去り小さくなっていくと、俺の周りで小犬の様にまとわりついていたボールは、
急にぜんまいが切れたようにポトン…と地面に落ちた。
俺はゆっくりと落ちたボールを拾いあげると鞄にしまい、靴を履き替えて自転車のペダルを漕いだ…。









第一話後書き…日曜日から連載すると言っておきながら、結局月曜日に。(とほほ)
昨日は母の日と言う事で、母さんと家人と一緒に市内で夕食を一緒に。
母の誕生日も近いので、本当は鞄でも縫ってプレゼントしようかと思っていたのに、何にも用意できず。
それでも母は満足そうだったので、良かった良かった。


さて小噺が始まりました。
稚拙な文章で読みづらいかと思います。
よろしければ、話の続きにお付き合いください。

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| オリジナル小説 | 23:04 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

もうはじまっていたか!

かつての天才サッカー少年も、今ではリフティングを50くらいしかできません。
私の持ち味はスピードでしたからw

| 和三郎 | 2007/05/15 20:45 | URL | ≫ EDIT

リフティング50!50もやれたら凄いじゃないですか!(まじ、尊敬です!)
スピードのある人、羨ましいですね!自分は現役でやってた時はずっとMFかバックでした。和三郎さんはどこやってたんでしょう?フォワードかなぁ。


| カオポン | 2007/05/15 23:42 | URL |

ポジションは

私は中学時代は背番号10番でした。
あまり好きで菜かったのですが、中学ではかってに14番を選べなかったので^^;
高校時代は9番。
当時は3トップだったので、CFです。
私はクライフのファンでした。今でもクライフターンをできると思います^^;

| 和三郎 | 2007/05/16 09:29 | URL | ≫ EDIT

ヨハン・クライフ!
14番を選びたかった、その気持ちよーくわかります(笑)
クライフのビデオ、雨が降って練習ができない時によく見たなあ…と懐かしく思いました。
クライフターン!何かすっごい懐かしい!
自分はプラティニ。トヨタカップを生まれて初めて見に行ったのが、プラティニの出た試合でした。
あと、日本では「オク(奥寺)」。

和三郎さんはCFだったんですかぁ。
うわあー、一度でいいからそのポジションについてみたかったです。

| カオポン | 2007/05/16 21:03 | URL |















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