カフェ番長

カフェ番長「カオポン」の、珈琲と喫茶店日記。 時には鞄を作ったり、ジャズを歌ったり。 手作りの暮らしを楽しんでます。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

「純喫茶」 その3

ron01.jpg


ずっとずっと家にいても何もする事が無いから、外をぶらつくことにした。
歩いて五分の所に、小さな小さな喫茶店がある。
仕事をしている時はなかなか行くことが出来ないから、今日は寄ってみようか。と、小さな扉をおしてみる。

扉をあけると、丁度客が出払ったばかりで店の中には誰もいなかった。
小さなカウンターの中には店主の姿もいない。
そういえば、店に入るときに屋根のほうから「ぱんぱん」と音がしたのを思い出す。
きっと二階で干した布団を叩いているのだろう。
適当に雑誌を手にすると、強すぎる冷房の風から避けるようにして、窓際の席に座る。


白いカーテンがかかった窓辺には、午後の陽射しがやわらかく照らされている。
一歩外に出れば溶けてしまいそうなほど強い日差しが照り付けているのに、この席に座ると逆に陽射しが恋しくなる。
天井から吊り下げられたテレビは、昼間の野球中継。丁度贔屓している選手がバッターボックスに立っていたが、あっけなく二塁ゴロで終わった。
ron02.jpg



店主はそれから暫くたってからやってきた。
私の顔を見るなり、「これはこれは」とすまなそうに頭をかいた。
「ホットを下さい」と頼むと、店主はカウンターの中へ入っていく。前に来た時より、少し足腰が弱くなったのか、そろりそろりと足をひきずる。それでも、背はきれいに伸びていた。

ron03.jpg



出された珈琲は相変わらず美味かった。
ここの珈琲は他よりも少しぬるい。店主が猫舌ということもあり、客に出す珈琲はほんの少しぬるくしている。
だからだろうか、「ふう」と冷ます事無くすぐに喉を通る珈琲の味は、驚くほどまろやかな味がする。
珈琲カップの影の色が少し秋の色を感じて、その場でシャッターを押す。
店主はそんな私の様子を、優しい眼差しで見つめていた。

飲み終えて帰るときに、私は店主に聞いた。
「ねえ、このお店はいつからあるの?」
「もう40年前になりますわ」
「40年、40年も!」
驚きに満ちた声で繰り返すと店主は「ふっ、ふっ」と笑った。

「この町で、一番古いんじゃないですかね」
「そうなんですか…。素敵なお店ですよね」
一番初めにこの店にきた時、店の奥にある皮ソファーがイームズのデザインのものだったことと、
使われている珈琲カップはオールドノリタケ。
当時使われていたものが、まだ現役で立派に機能しているのが嬉しくて、それ以来私はこの店のファンになった。

「でもね…」
釣り銭を私に渡すとき、店主は私にこう言った。もう、私も引退ですと。



じゃあ、気をつけてと扉を押してもらう。
外は焼け付くような西日が差し込んでいた。



スポンサーサイト

| 今日の喫茶店 | 17:15 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://kaoponcafe.blog8.fc2.com/tb.php/65-b12a1f82

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。